ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できる?注意点もわかりやすく解説
税負担の軽減を目的とした控除制度。現在、日本ではさまざまな種類の控除が受けられます。なかでも住宅ローン控除は利用する方が多く、身近な控除制度の1つではないでしょうか。しかし、その条件や上限額には決まりがあり、特にふるさと納税との併用には注意が必要です。正しく理解していないと自己負担額が発生してしまうこともあるでしょう。
そこで今回は、住宅ローン控除とふるさと納税、それぞれの制度について改めて確認するとともに、最適な併用方法をわかりやすく紹介します。住宅ローン控除とふるさと納税を賢く利用して、最大限効率よくふるさと納税を実施しましょう。
ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の上限額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!
目次
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用はできる?
ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できます。だたし確定申告では、住宅ローン控除よりも、ふるさと納税の控除が優先されるため、住宅ローン控除の節税メリットが薄れてしまう場合があります。
住宅ローン控除はまず所得税額から控除され、控除しきれなった分は住民税から控除できる仕組みです。しかし住民税から控除できる金額には上限があるため、ふるさと納税で所得税が優先的に軽減されてしまうと、住宅ローン控除が受けられる所得税額が減ってしまうのです。
併用するときの注意点を理解するためにも、まず住宅ローン控除(減税)とふるさと納税の仕組みをそれぞれ確認していきましょう。
住宅ローン控除(減税)とは?
「住宅ローン控除」は、正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。「住宅ローン減税」とも呼ばれ、住宅ローンを利用してマイホームを購入した際に、所得税の控除を受けられる制度です。2022年の改正により、返済開始から最長13年間、年末時点でのローン残高の0.7%が減税対象となりました。また、住宅ローンの控除額が所得税額を上回る場合、控除しきれなかった部分は住民税から控除される仕組みになっています。
ふるさと納税との併用に関しては、所得税では住宅ローン控除よりふるさと納税の寄付金控除が優先されるため、住宅ローン控除はふるさと納税の残り分となります。
ここで、具体的な控除の一例をみてみましょう。所得税15万円、住民税25万円の納税額の場合、住宅ローン残高4,000万円の控除はどのように計算されるのでしょうか。
所得税15万円−28万円=マイナス13万円(所得税なし、所得税超過分は住民税控除へ)
住民税25万円−(住民税控除の上限額)9.75万円=15.25万円(翌年の住民税)
今回のケースの場合、この年の所得税はなし、所得税を超過した分の13万円のうち、住民税控除上限の9.75万円が翌年の住民税から控除され、納税額は(最低で)15.25万円となりました。
ふるさと納税の控除とは?
近年利用者の数が増え、知名度も高いふるさと納税。生まれ育った故郷や応援したい自治体に貢献することを目的とした、都道府県や市区町村への寄付制度です。寄付金額のうち自己負担は2,000円のみで、所得税および住民税から控除が受けられます。控除の上限額は所得や家族構成によって異なります。復興支援など寄付金の使い道を指定することもできます。また、返礼品としてもらえる地域の名産品なども嬉しい特典です。
ふるさと納税を行う際には、所得税と住民税が控除の対象となる「確定申告」か、住民税のみを控除の対象とした「ワンストップ特例制度」を選ぶことができます。
これまで、ふるさと納税制度を利用するには、寄付をした自治体から「寄附金受領証明書」をもらい、確定申告で税務署に申請する必要がありました。しかし、平成27年からスタートした「ワンストップ特例制度」では、会社員などの給与所得者向けに手続きが簡略化されました。寄付先の自治体に申請書を提出することで、税務署での手続きを省略できます。ただし、もともと確定申告や住民税の申告が必要ないことや、年間で5自治体以内の寄付であることなどが利用条件です。条件に当てはまらない人は、確定申告を行う必要があるため、注意しましょう。
ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の上限額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する際の注意点
ふるさと納税と住宅ローンを併用するときは、次の2点に注意が必要です。
-
確定申告する場合、自己負担が発生してしまうケースがある
-
医療費控除などその他の控除を利用する場合は注意が必要
確定申告でふるさと納税と住宅ローン控除を併用すると、住宅ローン控除の税額軽減メリットが薄れてしまう場合があります。また医療費控除やiDeCoなど、その他の控除を利用するときも同様のケースが生じる可能性があるため、ふるさと納税の上限額を事前に確認しておきましょう。
確定申告する場合、自己負担が発生してしまうケースがある
ふるさと納税の寄付金控除と住宅ローン控除の併用は、双方における控除の合計額を把握することが大切です。住宅ローン控除は、所得税で控除しきれなかった差額分を住民税で控除する仕組みですが、所得税から繰り越された控除額が、住宅ローン控除の上限額に収まるようにすることが重要です。
ここで、自己負担が発生してしまうケースをわかりやすく紹介しましよう。
所得税15万円、住民税25万円、ローン残高4,000万円で住宅ローン控除を受けるとします。さらに、ふるさと納税6万円分(自己負担額2,000円控除後)の寄付金控除を確定申告で申請すると、どうなるでしょうか。
ローン残高4,000万円×控除率0.7%=28万円(住宅ローン減税の総額)
ふるさと納税の寄付金控除は、所得税と住民税の両方が対象となります。その計算方法 は、以下の通りです※。
住民税からの控除額(基本分):寄附金額6万円×10%=0.6万円
住民税からの控除額(特例分):寄附金額6万円×(100%−基本分10%−所得税率20.42%)=4.1748万円
つまり、所得税から約1.2万円、住民税から約4.8万円の控除を受けることになります。
所得税の控除は、ふるさと納税を先に計算するので、
所得税13.8万円-住宅ローン減税28万円=マイナス14.2万円(所得税なし、所得税超過分は住民税控除へ)
住民税で住宅ローン控除が適用される上限額は9.75万円です。つまり、住民税で得られるはずの控除額14.2万円のうち上限額の9.75万円を超えている差額は自己負担となります。
ふるさと納税が優先されて15万円から13.8万円に所得税額が減ったことで、ふるさと納税をしていなければ住宅ローン控除で15万円所得税額の控除が受けられたはずが、13.8万円しか控除が受けられなくなってしまいました。
ふるさと納税をしなかった場合のローン控除非適用額
6万円ふるさと納税をした場合のローン控除非適用額
3万2,500円
4万4,500円
住宅ローン控除と確定申告のふるさと納税を併用する場合は、双方の控除額を確認し、ロスが発生しないように注意しましょう。控除額をコントロールできるのは、ふるさと納税です。あらかじめシミュレーションをして、住宅ローン控除が住民税控除の上限に収まるように調整するとよいでしょう。
ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の上限額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!
医療費控除などその他の控除を利用する場合は注意が必要
ふるさと納税をする方は、医療費控除や、iDeCoによる控除(小規模企業共済等掛金控除)といったその他の控除を受けるときも、注意が必要です。
例えば、お勤めの方の場合、医療費控除を受けるには確定申告をしなければならないため、ワンストップ特例制度は使えなくなります。
また医療費控除やiDeCoで所得控除を受けると、所得税や住民税を計算するときの課税所得が減少するため、ふるさと納税の上限額が減少するため注意が必要です。ふるさと納税の上限額を超えると、超えた分の金額は多くが自己負担となるため注意が必要です。
医療費控除やその他の控除を受けるときは、ふるさと納税の上限額を必ず確認しておきましょう。
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用するなら「ワンストップ特例制度」が便利
控除額を気にすることなく、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用したいなら「ワンストップ特例制度」を利用するのがおすすめです。ふるさと納税のワンストップ特例制度には、控除の対象は住民税のみという大きな特徴があります。つまり、住宅ローン控除は所得税、ふるさと納税は住民税とすみ分けができるので、ふるさと納税の控除が所得税に割り込むことはありません。住宅ローン控除が所得税を超過した場合は住民税で控除となりますが、住民税控除の上限を超える可能性を低く抑えることができるでしょう。
では、先述のケースを例に、ワンストップ特例制度を利用してシミュレーションしてみましょう。
所得税15万円-住宅ローン減税28万円=13万円(所得税なし、所得税超過分は住民税控除へ)
住民税25万円-(住民税控除の上限額)9.75万=15.25万円(住民税残額)
住民税15.25万円-ふるさと納税6万円=9.25万円(翌年の住民税)
この例ですと、ローン控除の非適用部分が減ります。
ただし、ワンストップ特例制度を利用できるのは、以下の条件に当てはまる方のみになります。
- 年間の寄付先が5自治体以内
- 自治体へ申請書を郵送していること
- 確定申告をする必要のない給与所得者等であること
上記に当てはまる方であれば、ワンストップ特例制度を利用して控除申請できます。
ワンストップ特例制度を使ってふるさと納税と住宅ローン控除をする際の注意点
ワンストップ特例制度を利用することで、安心してふるさと納税と住宅ローン控除の併用ができることがわかりました。しかし、ワンストップ特例制度を使ってふるさと納税と住宅ローン控除をするには、いくつかの注意点があります。以下2点の注意点をきちんと理解し、正しく控除が受けられるよう確認しておきましょう。
確定申告の必要がある方は使えない
ワンストップ特例制度は、確定申告が必要な方は利用できません。そもそもワンストップ特例制度は、確定申告における税務署手続きを省略できるシステムです。個人事業主や給与が2,000万円を超える方、給与所得のほかに雑所得など がある方、医療費控除といったほかの控除も受ける方は、確定申告をしなければならないため、ワンストップ特例制度の対象外となります。
この制度を活用できるのは、主に会社員などの給与所得者で、確定申告が不要となる方が対象です。
住宅ローン控除1年目は使えない
住宅ローン控除1年目は、ワンストップ特例制度を利用することができません。なぜなら、住宅ローン控除を受けるためには、最初の年に確定申告をする必要があるからです。
住宅ローン控除の初回の確定申告は、入居した年の翌年です。必要書類を用意し、申請書に添付して提出します。確定申告をするのは1年目のみです。住宅ローン控除の手続きは毎年必要ですが、2年目以降は年末調整のみで住宅ローン控除が使える場合がありますので、そうなれば、ふるさと納税でワンストップ特例制度を使うことができます。
まとめ
ふるさと納税の寄付金控除と住宅ローン控除の併用にはいくつかの注意点がありますが、うまく併用することで効率よくふるさと納税を行えます。正しく理解して活用することで、ふるさと納税の金銭的なメリットを十分に享受しましょう。
ふるさと納税のことなら、ふるラボにおまかせください。ふるラボでは日本の素敵なヒトモノコトを皆様にご紹介をしております。ぜひ、ふるラボであなたにピッタリの寄付先を探してみてはいかがでしょうか。
ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の上限額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!