ふるさと納税の仕組みとは?限度額の計算方法や住民税が安くなる理由を解説

ふるさと納税の仕組みとは?限度額の計算方法や住民税が安くなる理由を解説

ふるさと納税とは、今まで自分の住む地域に納めていた税金を好きな地域に納めることで、その地域の食品や特産品などを手に入れられる制度です。

この記事では、ふるさと納税の仕組みや手続きの流れ、つまずきやすいポイントへの対応を解説しています。今まで気になっていても難しそうと思って躊躇していた方は、ぜひ参考にしてみてください。

ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の限度額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!

ふるさと納税とは

これまで、納税といえば自分が住む地域の自治体に行うことが基本でした。多くの人が「ふるさと」の恩恵を受けて成長しますが、都会で仕事をするようになると、ふるさとに税収が入らないという問題がありました。そこで、納税者が自分の意志で納税できる地方自治体を選べるようにした制度が「ふるさと納税」です。生まれ育ったふるさとだけではなく、自分が好きな地域、応援したい地域など、複数の自治体に寄付金という形で納税ができます。

一方で、ふるさと納税をした納税者側は、自治体から地域の特産品や工芸品、食品など、さまざまな返礼品がもらえます。また、今までの税金には「使い道がわかりにくい」という意見もありましたが、自治体によっては寄付金の使い道を選べるようになっています。

ふるさと納税の仕組み

納税者は自分の住んでいる自治体に対して、勤める企業や税務署を通して納税をしています。納付された税金は自治体の財源として、行政サービスや公共事業などに活用されています。

ふるさと納税を活用して自分が選んだ自治体へ納税をすると、寄付金額の約3割に相当する特産品を手に入れることができます。納税額は一緒でも、ふるさと納税をした方が、納税者が受けられる恩恵が大きくなるのです。

ふるさと納税を行うためには、いくつかの手順を踏む必要があります。ここでは東京在住の納税者が山梨県へふるさと納税をした場合を例にしてみましょう。

まず、納税者はふるさと納税の制度を使って山梨県へ10万円の寄付を行います。すると、山梨県からはブドウやワインなど3万円相当の返礼品と、寄付金受領証明書が送られてきます。寄付金受領証明書と必要な書類を揃えて東京の税務署に確定申告、またはワンストップ特例を申請すると、ふるさと納税を行った年の所得税の還付や、翌年度分の住民税の減額が受けられます。

ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の限度額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!

ふるさと納税のメリット

ふるさと納税の最も大きなメリットは、効率的に税金を納められることです。今までは特に見返りのなかった住民税や所得税の納付を、「返礼品」というお返し付きで納付できるようになります。

同じ金額を納税するのであれば、ふるさと納税を活用して返礼品をもらった方が、自分と自治体の両方にメリットがあります。

実質負担2,000円で好きな返礼品がもらえる

寄付金の上限金額を超えない限り、自己負担2,000円で自治体の特産品を返礼品としてもらうことが可能です。具体的な返礼品には次のようなものがあります。

  • 食品)肉類、魚介類、果物、野菜、お米、お酒、お菓子など

  • 工芸品)カバン、洋服、アクセサリー、陶器・漆器など

  • サービス)ホテル宿泊券、食事券、ゴルフ場利用券、美容体験など

効率的に所得税・住民税の支払いができる

今までは所得税や住民税を納税して終わりでしたが、ふるさと納税の場合は、納税者は返礼品をもらうことができ、寄付先の自治体は財源を確保できるという、一石二鳥の制度です。

寄付金は地域のために使われるため、自分が好きな地域の発展に貢献することができるでしょう。

食料品をメインで選べば食費の節約も可能

自治体のおすすめするお肉や魚介類、野菜、お米など、食材を返礼品として受け取ることができます。普段から食べる食材をメインに返礼品を選べば、食費を抑えることにつながり、2,000円の自己負担以上の節約になります。

返礼品に食材をもらっても「食べきれないのでは?」と思うかもしれませんが、実はふるさと納税では1度にすべての金額を納税する必要はないのです。1カ月単位で複数回に分けて納税すれば、おいしい食材を毎月食べられます。

返礼品の種類も増えており欲しいものを賢くゲットできる

ふるさと納税には「好きな返礼品」を選ぶ楽しみがあることも忘れてはいけません。例えば、コーヒーが好きな人はコーヒー豆やコーヒーメーカー、アルコールが好きな人は地方限定のお酒や伝統工芸品の食器、旅行が好きな人はホテル宿泊券など、自分の趣味に合ったものを購入してもよいでしょう。

ふるさと納税のデメリット

ふるさと納税を考えるとき、デメリットに目を向けておくことも大切です。特にふるさと納税に節税・減税効果があると勘違いしている人が多く見られます。

節税・減税効果はない

ふるさと納税を活用する過程で所得税の還付や住民税の減額が含まれるため、節税・減税効果があると思うかもしれません。しかし実は還付・減額される金額は、寄付した額とほぼ同額。そのため、節税・減税効果はありません。住んでいる地域に納付していた税金の一部を別の自治体に収めているイメージに近いでしょう。

控除限度額をしっかり計算しないと自己負担が2,000円を超えてしまう可能性がある

ふるさと納税では任意の自治体にいくらでも寄付ができます。しかし、納めている税金以上に控除を受けることはできないため、手元に戻ってくる額には上限があることに注意が必要です。これを寄附金控除限度額と呼びます。

寄附金控除限度額は自分の年収や家族構成などによって変わるので、ふるさと納税をする前に限度額を知っておくことが大切です。控除限度額の調べ方は、これから説明する「ふるさと納税の控除限度額の計算方法」で詳しく解説していきます。

寄附金控除の申請に手間がかかる

ふるさと納税を活用するうえで1番のハードルは、慣れない「寄附金控除の申請手続き」です。確定申告やワンストップ特例制度という言葉を聞いただけで、なんだか手間だなと感じる人も多いかもしれません。馴れないうちは少し手間がかかるのですが、1度経験してポイントを押さえてしまえば、2回目以降は流れ作業でできるようになります。

ふるさと納税の控除限度額の計算方法

ふるさと納税の控除限度額を知るには、自分の年収を把握することと家族構成だけわかれば大丈夫です。総務省のホームページに早見表もあるので、少しでもふるさと納税が気になっているなら、まずは具体的な控除限度額を計算してみましょう。ふるラボの「かんたんシミュレーター」なら年収と家族構成を入力するだけで、計算結果をすぐに確認できます。

ただし「ふるラボ」のシミュレーターで調べられる金額は簡易的なもので、保険料控除などは考慮されていません。詳しい上限額を調べる際は、総務省の納税額早見表と付け合わせて確認するか、お住まい(ふるさと納税翌年1月1日時点)の市区町村にお問い合わせください。

ふるさと納税で住民税はいくら安くなる?

住民税の控除額は次の2つの式の計算結果の合算となります。

住民税からの控除(基本分)=(ふるさと納税の寄付金額-2,000円)×10%
住民税からの控除(特例分)=(ふるさと納税の寄付金額-2,0000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)

  • 年収400万円、独身の場合:控除限度額=42,000円

    住民税からの控除(基本分+特例分)=(42,000円-2,000円)×10%+(42,000円-2,000円)×(100%-10%-20%)=32,000円

  • 年収600万円、独身の場合:控除限度額=77,000円

    住民税からの控除(基本分+特例分)=(77,000円-2,000円)×10%+(77,000円-2,000円)×(100%-10%-20%)=60,000円

  • 年収800万円、独身の場合:控除限度額=129,000円

    住民税からの控除(基本分+特例分)=(129,000円-2,000円)×10%+(129,000円-2,000円)×(100%-10%-20%)=10万1,600円

ふるさと納税で所得税の還付はいくら受け取れる?

所得税の控除額は次の式の計算結果となります。

所得税からの控除(基本分)=(ふるさと納税の寄付金額-2,000円)×(所得税の税率)

  • 年収400万円、独身の場合:控除限度額=42,000円

    所得税からの控除=(42,000円-2,000円)×20%=8,000円

  • 年収600万円、独身の場合:控除限度額=77,000円

    所得税からの控除=(77,000円-2,000円)×20%=15,000円

  • 年収800万円、独身の場合:控除限度額=129,000円

    所得税からの控除=(12,900円-2,000円)×20%=25,400円

ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の限度額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!

ふるさと納税に必要な書類一覧

ふるさと納税を行うには次の書類の原本やコピーを用意する必要があります。

  • 源泉徴収票

    自分の年収や納めた所得税額などが記載された書類のこと。一般的には12月の年末調整の後に会社から受け取れます。

  • 寄附金受領証明書

    返礼品とは別に送付される書類です。再発行が難しいため、届いたら必ず保管しておきましょう

  • 還付金受取口座の通帳

    確定申告をした後、所得税の還付金は指定した銀行口座に入金されます。自分の名義で開設した銀行口座の通帳のコピーが必要です。

  • 個人番号(マイナンバー)確認書類

    マイナンバーを確認できる書類のこと。マイナンバーカード、マイナンバー通知カード、マイナンバーが記載された住民票があたります。マイナンバーカードを持っていれば、その表面と裏面をコピーすればOKです。マイナンバー通知カードや住民票しかない場合は、本人確認書類も必要になります。

  • 本人確認書類

    マイナンバーの持ち主であることを確認できる書類のこと。運転免許証やパスポートなどの写真付き身分証明書があたります。

  • 寄附金税額控除に係る申告特例申請書

    「ワンストップ特例制度」を利用する場合に必要な書類です。ふるさと納税時に自治体からの送付を申し込んだり、総務省や各自治体のホームページからダウンロードしたりして入手できます。

ふるさと納税の利用から寄附金控除をするまでの手続き

ふるさと納税を利用し、税金の控除を受けるまでの手順をご紹介します。多くの人が「控除上限額の算出」と「確定申告/ワンストップ特例制度」を難しく感じているでしょう。

ここでは具体的な手順とともに解説します。

寄附金控除上限額がいくらなのか確認する

具体的な寄付金控除上限額を算出するためには、配偶者の有無、扶養家族の有無、その他各種控除額が必要です。これらは源泉徴収票に書かれているため、事前に用意しておくと便利です。

簡単に寄付金控除上限額を計算するためには、シミュレーション機能の利用がおススメです。

《STEP 1:自分の年収と家族構成を入力》

《STEP 2:シミュレーション結果がすぐに出てきます》

ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の限度額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!

欲しい返礼品(寄付する自治体)を選んで寄付する

自分が欲しい返礼品を自由に選びましょう。返礼品として食品を選ぶ場合には、食品の量にも注意が必要です。複数月に分けて食べきれる量に寄付しましょう。欲しい返礼品が決まったら、寄付する前に合計金額を計算し、寄付金控除上限額よりも下回っていることを必ず確認しておきます。

寄付した自治体から返礼品が贈られてきます。また、寄附金受領証明書も返礼品とは別に送付されてきます。もし、寄附金受領証明書を紛失してしまった場合、原則として再発行ができません。送付されてきたら大切に保管しておきましょう。

確定申告またはワンストップ特例制度を通して「寄附金控除」の申請を行う

ふるさと納税を行ったら、税金からの控除を受けるために申請手続きを行います。申請手続きには確定申告を利用するパターンとワンストップ特例制度を利用するパターンの2種類があります。

サラリーマンなどの給与所得者の場合、1年間の寄付先が5自治体までであれば、ワンストップ特例制度が利用できます。確定申告に慣れていない場合は必要書類が少なく、手続きが容易なワンストップ特例制度が便利です。

ただし申請期限(翌年1月10日)を過ぎてしまった場合や、寄付先が6自治体を超える場合は確定申告を行う必要があるため、注意が必要です。

サラリーマンでも医療費控除や副業収入の申告がある場合、また自営業者の場合はふるさと納税もまとめて確定申告する方がおススメです。ちなみに、ワンストップ特例制度と確定申告の両方で申告した場合、ワンストップ特例制度による控除の方が無効になります。

確定申告をする必要がある場合

確定申告に必要な書類は以下の通りです。

  • 源泉徴収票

  • 寄付金受領証明書

  • 還付金受取口座の通帳

  • 個人番号(マイナンバー)確認書類

  • 本人確認書類 ※マイナンバーカードを持っていない場合

確定申告では、源泉徴収票を参考にした年収や各種控除に加えて、ふるさと納税の寄付の年月日や寄付先、寄付金の金額などを記入していきます。

また、確定申告の際は、寄付先から送られてくる「寄附金受領証明書」が必要です。基本的には、寄付した自治体から郵送されるので、大切に保管しておきましょう。

もし期間内に確定申告ができなかった場合でも安心してください。5年以内であれば税務署に「還付申告」をすることで控除を受けられます。

ワンストップ特例制度を利用する場合

ワンストップ特例制度を利用する場合、翌年の1月10日までに必要書類を記入して、寄付した自治体に申請する必要があります。申請に必要な書類は次の通りです。

  • マイナンバーカード及び申請者本人を確認できる書類

  • 寄附金税額控除に係る申告特例申請書

申請書には自分の住所や名前、マイナンバーに加えて、ふるさと納税の寄付金額や寄付年月日など基本的な項目を記入するだけ。確定申告と比較して必要な書類も少なく、手続きが簡単です。

翌年の住民税決定通知書で控除を受けられているか確認する

ふるさと納税の申請が終わっても、正しく処理されているかどうか気になるところです。毎年5~6月頃に勤務先から渡される「住民税決定通知書」の中で、「都道府県民控除+市民控除-2000円」がふるさと納税額となっていることを確認しておきましょう。

ふるさと納税制度を利用する際の注意点

ふるさと納税を初めて利用する場合、多くの人が「ワンストップ特例制度」、「控除限度額」、「返礼品が届くペース」のいずれかを難しく感じ、時には失敗してしまうこともあります。ふるさと納税を利用する前には、これらの3つのポイントをよく確認しておくことが大切です。

まとめ

この記事ではふるさと納税の仕組みやメリット・デメリット、具体的な手続きの方法について紹介しました。ふるさと納税は手続きが難しいイメージがあり、なかなか1歩を踏み出せない人も多いかもしれません。

また、申請を始めたものの途中でわからなくなってしまう場合もあります。しかし1度利用してしまえば、2回目以降は簡単に手続きを進められるもの。上手に利用すれば家計が楽になったり、地域の特産品を楽しめたりとメリットも多い制度です。

少しでも興味を持った人は、ぜひふるさと納税を活用してみてください。

ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の限度額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!