企業版ふるさと納税とは?企業側のメリットや事業例をわかりやすく解説
昨今注目を浴びている「ふるさと納税」。個人向けだけではなく、企業向けの「ふるさと納税」制度もあることをご存じですか?
企業が「ふるさと納税」を行った場合、自治体への支援のほか、企業イメージを向上させる効果があり、令和2年度には533の自治体へ1,640もの企業が「企業版ふるさと納税」を行っているほど、広がりをみせています。
現在多くの企業が取り組みはじめている「企業版ふるさと納税」がどのような制度なのか、メリット・デメリットなどを詳しくみてきましょう。
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目次
企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)とは?
人口減少・超高齢化社会を迎えている日本。人口減少によって地方の活力が低下するなか、平成28年度の税制改正で地方創生のために創設されたのが「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)」です。
「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)」とは、国が認めた地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄付を行うと、税額が法人関係税から控除されるという税制優遇制度のことです。
もともとは、寄付額に対して約3割の損金算入による軽減効果に加えて、さらに3割の税額を控除するという制度でした。その後、令和2年度の税制改革により、税額控除の割合が6割まで拡大。最大で寄付額の約9割にあたる税金が控除されることになりました。税控除の割合が拡充することにより、地方公共団体と新しく関係を築くきっかけにもなると言われています。
しかし、「企業版ふるさと納税」の税額控除は、令和6年度までの期間限定措置です。もし「企業版ふるさと納税」に興味がある場合は、早めに動いた方がよいかもしれません。
企業版ふるさと納税の仕組み
「企業版ふるさと納税」の仕組みは、以下の通りです。
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地方公共団体が地域再生計画を作成
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内閣府が計画の認定を行う
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認定された計画に対し、企業が1回あたり10万円以上の寄付を行うと税額控除の対象に
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寄付額に応じて企業の法人税や法人住民税・法人事業税が控除される
ただし、企業の本社が所在する地方公共団体への寄付は、控除の対象外となるなど、注意事項もあります。「企業版ふるさと納税」について詳しく知りたい方は、内閣府の「地方創生サイト」をご確認ください。
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企業版ふるさと納税の事業例
「企業版ふるさと納税」の仕組みがわかっても、実際どのように寄附金が活用されているのかは、まだイメージが沸きにくいですよね。そこで、内閣府地方創生推進事務局が公開している「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)に係る特徴的な事業例」から、いくつか例をみてきましょう。
鹿児島県鹿屋市では、合計特殊出生率の上昇を目標に子育て広場の設置事業を提案。企業からの寄付によって、もっと子育てしやすい環境整備を目指しました。
また、石川県小松市では、伝統工芸である「九谷焼」の従業者数を増やすためのプロジェクトを推進し、長野県根羽村では持続可能な山づくり推進プロジェクトを採用。人材の育成・確保といった地域の仕事作りに関わる事業から少子化対策まで、「企業版ふるさと納税」は様々な観点から町づくりを助けています。
ほかにも、災害対策や新型コロナウイルス感染症対策など、社会的に注目度の高い問題への取り組みもあるようです。
実際に寄付をした企業からは「寄付を通じて医療や福祉の現場を支援でき、感謝の気持ちを伝えられる」「被災した地域に制度を活用して寄付ができて良かった」など、やりがいを感じているコメントが多く寄せられていました。
企業版ふるさと納税を活用するメリット
地域創生の手助けになる「企業版ふるさと納税」ですが、もちろん企業側へのメリットも数多くあります。主なメリットとしては、下記が挙げられます。
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地方との繋がりの獲得
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地方への貢献による企業イメージのアップ
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税額を控除できる
「企業版ふるさと納税」を行うことは、金銭面だけでなく、上記のような効果をもたらしてくれるようです。
以降で詳しく解説していきましょう。
地方創生に貢献でき、地方自治体との繋がりも構築できる
まず、メリットとして挙げられるのは、「地方自治体との繋がりを得られる」点です。寄付をきっかけに、寄付事業以外でも地方自治体と共同プロジェクトを行っている企業は少なくありません。
例えば、ソフトウェアの開発・販売をしているアステリア株式会社は、寄付を契機に寄付先と対話を行ったり、広報に関する勉強会を開催したりして関係を深めていったそうです。その後、自社の強みを活かし、被災状況報告アプリを寄付先と共同で開発したといいます。
また、「企業版ふるさと納税」には、お金を寄付する以外に、地方公共団体へ人材を派遣して「人件費を含む事業費について寄付する」という人材派遣型の寄付制度もあります。人材派遣型の寄付の場合、地方公共団体と関係をより密接に作れるうえに、「通常なかなか経験できない行政の現場を社員に体験してもらえたことで成長に繋がった」という声も上がっています。
このように、自社の製品が活かせそうな寄付先や自社に役立つノウハウを持っている寄付先を選んでマッチングすれば、寄付事業とは別に新たな取り組みが始まる可能性があります。「企業版ふるさと納税」を上手く使って、新たな事業拡大の足掛かりにするのもよいかもしれません。
企業のイメージアップに繋がる
地方創生の取り組みを応援することは、企業のPRにもうってつけです。「企業版ふるさと納税」では、寄付企業への経済的な見返りは禁止であるものの、地方公共団体がホームページで紹介したり感謝状を贈呈したりすることは認められています。そのため、地方公共団体のプロジェクトに関わったことが住民などに周知されれば、寄付企業に好意的なイメージを持ってもらいやすく、またその企業の製品を購入してくれたり、サービスを利用したりしてくれる可能性も広がるのではないでしょうか。
また、最近ではESG、SDGsが企業価値を判断するのに重要視されており、「企業版ふるさと納税」はそれらの達成にも有効な方法だと言えます。
ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせた略語で、この3つを重要視しながら経営を進めることを意味する言葉です。SDGsは、持続可能な社会の実現を目指すために国や企業が取り組むべき17の目標のことで、「すべての人に健康と福祉を」「安全な水とトイレを世界中に」「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」などといった指標があります。
環境保全や福祉の充実などの大きな目標は、一企業だけが努力してもなかなか達成するのは難しいかもしれませんが、地方公共団体のプロジェクトに寄付というかたちで参画することで、目標の達成に大きく携わることができるでしょう。
「企業版ふるさと納税」の寄付先には、こうしたESG、SDGsに関する問題を改善するためのプロジェクトも多いため、寄付することで社会問題改善への積極性をアピールできますよ。
最大寄付額の9割が控除の対象になる
「企業版ふるさと納税」のメリットとしてまず挙げられるのが、約9割にもおよぶ高い税控除額です。「企業版ふるさと納税」を行うことで、最大寄付額の約9割が軽減されます。
例えば、1,000万円を寄付した場合、まずは全体の4割(400万円)にあたる額が、法人住民税から控除されます(ただし、寄付額の1割を限度とする)。その後、さらに法人事業税から寄付額の2割(200万円)控除されるため、損金算入で引かれる300万円と合わせると、合計で900万円が寄付額から軽減されることになるのです。
軽減される税金にはそれぞれ上限の割合があるものの、何もせずに税金を納めるよりは確実に税負担を軽減することができるでしょう。
企業版ふるさと納税をする際のデメリット
多くのメリットがあるなか、「企業版ふるさと納税」は、個人で行う「ふるさと納税」に比べると直接的な利益は少ないというデメリットも存在します。もちろん、「ふるさと納税」は本来寄付であるため、企業利益を考慮すべきでないという部分もあるでしょう。とはいえ、「企業版ふるさと納税」を行う前に、あらかじめデメリットを確認しておけば、いざ取り組み始めたときに「イメージと違った」といった事態を避けられるはずです。
以降で詳しく解説していきましょう。
通常のふるさと納税と異なり返礼品などはない
個人で行う「ふるさと納税」の人気理由の1つには、各自治体の特産物など、多様な返礼品が届くことが挙げられます。しかし、「企業版ふるさと納税」は、経済的な利益を受け取ることが禁じられているため、返礼品はありません。
ほかにも、商品券やプリペイドカードなどの換金性が高い商品の提供や、寄付活動事業で整備された施設の専属的な利用なども禁止されているので、留意しておきましょう。
直接的な利益は生まれない
返礼品がないということは、寄付したお金がそのまま地方のプロジェクトに充てられるだけで、企業側の直接的な利益はゼロに等しくなります。
寄付の見返りに補助金を受け取ったり、有利な利率で貸し付けをしてもらったりといった行為もNGになりますので、注意しましょう。
企業版ふるさと納税の対象になっている事業か確認する手間がかかる
「企業版ふるさと納税」が行える事業かどうか検討する際に、手間がかかる点もデメリットと言えるでしょう。例えば、企業の本社が所在する地方公共団体への寄付は対象外となるほか、地方交付税を受けていない自治体も対象外になるなど、寄付先の団体選びには時間をとられる可能性があるため、時間をかけてしっかりと検討する必要があります。
企業版ふるさと納税の税控除額が最大になるのは?
「企業版ふるさと納税」のメリット・デメリットをみてきましたが、実際にどれくらいの税額を控除できるのか気になりますよね。
例えば、東京都新宿区に本社がある資本金1,000万円・課税所得5,000万円の企業の場合は、控除による減税効果を最大限発揮させるには、寄付額の上限目安が53万円となります。
実際に、「企業版ふるさと納税」で53万円寄付したとすると、まず損金算入による税負担の軽減効果は、寄付額の約3割にあたる15万9,000円です。それに加えて法人住民税と法人税で21万2,000円が控除されます。最後に、法人事業税の10万6,000円も控除となり、企業負担は約1割の5万3,000円にまで抑えられる計算になります。
寄付額の上限目安は、企業の資本金や課税所得額により異なるため、詳しく知りたい人は自社の顧問税理士などに確認するとよいでしょう。
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企業版ふるさと納税の控除申請手順
では、実際に「企業版ふるさと納税」で控除申請する際の手順を確認していきましょう。
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寄付する地方公共団体を決め、寄付先に申請書を送付する。(申請書はホームページからダウンロード可能)
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寄付を受けた地方公共団体が事業を実施。
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地方公共団体が寄付金の受領書を交付。
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企業は、受け取った受領書と必要事項を記入した別表を税申告の際に提出して完了。
最後に提出する別表とは、「認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」のこと、国税庁のホームページよりダウンロードできます。記載項目は、法人名や資本金などの企業の基本情報と、対象となる特定寄付金の寄付額や寄付先を記入します。
さらに、「特定寄付金の額の合計額」や「税額控除基準額」などを細かく記入する欄があるため、提出書類を準備する際は、あらかじめ寄付時のデータなどを一通り用意しておくと便利です。
自社事業とマッチした企業版ふるさと納税の探し方
税金控除の申告手順がわかったところで、いざ「企業版ふるさと納税」をしようとしても、あらゆる地方自治体があるため、寄付先に迷ってしまいますよね。
内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局と内閣府地方創生推進事務局が運営している「地方創生サイト」では、地域別に「企業版ふるさと納税」の対象事業を掲載しています。各事業の詳しい内容だけでなく、関連するSDGsの目標も一目でわかるようになっているため、自社の事業と相性の良さそうな寄付先を選んでみてください。
まとめ
直接的な利益があるわけではないものの、企業のPRや地方自治体とのコネクションができるというメリットがある「企業版ふるさと納税」。ESGやSDGsが注目されるなかで、さまざまなかたちで地域貢献ができる「企業版ふるさと納税」は、やりがいのある取り組みだと言えそうです。
将来的な自社の発展のためにも、今回の記事を参考にして、「企業版ふるさと納税」で地方と新たな繋がりを持ってみてはいかがでしょうか。
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