ふるさと納税と医療費控除は併用できる!失敗しないための手続き方法と注意点を解説

ふるさと納税と医療費控除は併用できる!失敗しないための手続き方法と注意点を解説

ふるさと納税と医療費控除は、どちらも税金が控除される制度です。しかし、2つの控除を併用できるのか、疑問に感じた人もいるのではないでしょうか。結論としては、ふるさと納税と医療費控除は併用可能です。ただし、併用するには細かい注意点が存在し、場合によっては失敗してしまうことも……。そこでこの記事では、ふるさと納税と医療費控除を併用する方法や注意点について詳しく解説していきます。

ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の限度額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!

ふるさと納税と医療費控除は併用可能

ふるさと納税と医療費控除は、併用することができます。それぞれの制度のメリットを享受すれば、毎年の税負担が減るため、まずは制度の概要をしっかり確認しておきましょう。

  • ふるさと納税

    自治体を選び、寄付をすることで、所得税や住民税の税額控除が受けられる制度です。控除限度額は年収や家族構成によって異なりますが、寄付額から自己負担金の2,000円を差し引いた金額が対象となります。また、寄付した自治体からは寄付金額の約3割に相当する返礼品(地域の特産品や食品)が届くとあって、広く浸透している取り組みとなっています。

  • 医療費控除

    医療費が家計に与える影響を軽減するための制度です。1年間の医療費が10万円(総所得額が200万未満の場合は総所得額の5%)を超えた分、課税所得額から控除されます。納税者本人だけではなく、生計を同一にする家族の医療費も含まれることが特徴です。定期的な通院が必要な人や、出産した際に活用する人が多い制度です。

ふるさと納税と医療費控除を併用する際の注意点

ふるさと納税と医療費控除を併用する上で、気をつけなければいけないポイントが2点あります。それは「ワンストップ制度との併用は不可能」である点と、「ふるさと納税の限度額が変わる」ことです。もし併用の手続きに失敗すると、場合によっては損をしてしまうこともあるため、ポイントを押さえておきましょう。

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ワンストップ特例制度では併用が不可能なので注意

ワンストップ特例制度とは、ふるさと納税を行った際に、確定申告を行わずに寄付金控除が受けられる制度です。ワンストップ特例制度を利用すると、住民税のみから税金が控除されます。ただし、利用するには確定申告が不要な給与所得者であることや、寄付先が5自治体以内という制限はありますので、注意しましょう。

このワンストップ特例制度を利用してふるさと納税を行った場合は、医療費控除を併用することができなくなります。そのため、併用を考えている人は、ワンストップ特例制度ではなく、確定申告を行うようにしましょう。

ふるさと納税の控除限度額が変わる

ふるさと納税は、自治体に寄付した額から2,000円の自己負担額を除いた金額が、所得税と住民税から控除される制度です。そのため、ご自身が支払う予定の所得税、住民税の額に応じた控除限度額が存在します。

医療費控除を申告すると課税所得額が減ることになるため、ふるさと納税の控除限度額も減ることになります。医療費控除を考慮していないと、気づかない内に控除限度額を超えて寄付をしてしまい、自己負担額が2,000円を超えてしまう可能性が出てくるので注意しましょう。

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ふるさと納税と医療費控除を併用した際の失敗例

実際に、ふるさと納税と医療費控除を併用しようとして失敗してしまった例を2つご紹介しましょう。

ワンストップ特例制度と確定申告で寄付金控除と医療費控除を併用した例

ふるさと納税のワンストップ特例制度を申請した後、年末に1年間の医療費が10万円を超えることが判明したため、確定申告で医療費控除を申請する場合があります。ワンストップ特例制度の申請後に確定申告書を行った場合には、ワンストップ特例制度の申請が無かったことになります。そのため、自治体へ寄付金を支払っているにも関わらず、税額控除が適用されません。

すでに確定申告書を行ってしまった場合には、申告期限である3月15日までであれば、寄付金控除を新たに追記した確定申告書を作成し、再提出することで対処できます。

もし再提出が3月16日以降になる場合には、「更正の請求書」を作成し、税務署へ提出することが必要です。更正の請求は、申告期限から5年経過するまでの期間で請求できるため、気づいた段階で早めに手続きを行うようにしましょう。

医療費控除を加味せず、ふるさと納税をした例

もっとも注意しなければならないのは、医療費控除を加味していない控除限度額をもとに、ふるさと納税を行った場合です。

例えば、当初の控除限度額が4万2,000円と計算された場合、本来であれば自己負担2,000円を除いた4万円分の税額控除と返礼品を受け取ることができます。しかし、医療費控除の申請により課税所得額が減り、実際の控除限度額が4万円になった場合、受けられる税額控除は3万8,000円分になります。すでに4万2,000円を寄付しているため、その差額(4万2,000円-3万8,000円=4,000円)が自己負担額となり、本来よりも多い金額を自己負担することになってしまいます。

すでに寄付の手続きが完了している場合、寄付をキャンセルすることはできません。医療費控除による控除限度額の変化を事前に計算したり、控除限度額に少し満たない金額までの寄付に留めておいたりなどの考慮が大切です。

併用する前にふるさと納税の控除限度額を再計算しよう

上記の例で説明したように、ふるさと納税と医療費控除を併用する場合、医療費控除を加味しないで寄付してしまうと、気づかない内に自己負担額が多くなってしまう可能性があります。そのため、併用する前には必ず、ふるさと納税の控除限度額を再計算しておくことが大切です。

控除限度額の再計算は、①医療費控除の金額の計算、②医療費控除を加味したふるさと納税の控除限度額の計算、という2つのステップで行います。

ステップ1:医療費控除の金額を計算する

医療費控除の金額は、以下の式で計算できます。

医療費控除の金額=(1年間に支払った医療費の合計額)※1-(保険金などで補填される金額)※2-10万円(総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額の5%の金額)

※1 医療費の対象となる項目:診療費・治療費・入院費、入院時の部屋代、処方箋が必要な医薬品の購入費用、通院時の交通費、など
※2 生命保険などの入院給付金、出産育児一時金、など

ステップ2:医療費控除を加味したふるさと納税の控除限度額の計算

一般的には、医療費控除額の2~5%が、ふるさと納税の控除限度額から少なくなると言われています。

例えば、医療費控除の金額が10万円と算出された場合、2,000~5,000円が控除限度額から少なくなります。正確な金額を確認したい場合には、居住地の市区町村の担当窓口や税務署に問い合わせることがおすすめです。

ふるさと納税と医療費控除の併用には「確定申告」が必要

ふるさと納税と医療費控除を併用するためには、必ず確定申告が必要になります。確定申告は難しい書類が多く、面倒に感じてしまう人もいるかもしれませんが、税金を払い過ぎたままではもったいない話です。

以下では、確定申告する際の具体的なやり方を説明しているため、ぜひ参考にしてみてください。

確定申告で寄付金控除と医療費控除を受ける方法

それでは、確定申告で寄付金控除と医療費控除を併用して受ける方法を詳しく確認してみましょう。確定申告に必要な書類を揃え、確定申告書を記入し、税務署に提出する3つのステップが必要です。

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確定申告に必要な書類

寄付金控除や医療費控除を受ける場合に必要な書類を、以下にまとめてみました。確定申告をする前に手元にあるか確認しておきましょう。

ふるさと納税の寄付金控除に必要な書類

  • 寄附金受領証明書

    自治体から送付されてくる寄付金の受領証明書です。返礼品とは別に送付されます。紛失すると再発行が難しいため、送付されてきた際には大切に保管しましょう。

  • 源泉徴収票

    ご自身の総所得や納めた所得税の額が記載された書類です。給与所得者であれば、毎年12月頃の年末調整の際に勤務している会社から受け取れます。

  • 還付金受取用の銀行口座番号

    確定申告を申請した後、所得税の還付金は指定した銀行口座に振り込まれます。受け取る銀行口座の通帳のコピーなど、口座番号がわかるものを用意しましょう。申請者自身の名義であることが必要です。

  • 本人確認書類(マイナンバーカード、またはマイナンバー通知カード+身元確認書類)

    マイナンバーカードをもっていれば、カード両面のコピーがあれば大丈夫です。マイナンバー通知カードのみ、またはマイナンバーが記載された住民票のみしかもっていない場合には、追加で身元確認書類が必要です。身元確認書類には、運転免許証、パスポートなどが利用できます。

医療費控除に必要な書類

  • 源泉徴収票

    ご自身の総所得や納めた所得税の額が記載された書類です。

  • 医療費通知

    会社勤めの人の場合、全国健康保険協会から送付されてくる「医療費のお知らせ」のことです。1年間の医療費の合計額が記載されているため、医療費控除の明細書の記入を簡略化できます。一般的には1月下旬~2月上旬に勤務先から受け取れます。

  • 医療費や交通費の領収書

    支払った医療費や交通費に関する領収書やレシートのことです。医療費控除の明細書を記入する上で参考になるため、こまめに整理しておきましょう。平成29年以降は、税務署へ提出する義務はなくなりましたが、確定申告から5年間は保管しておく必要があります。

  • 医療費控除の明細書

    1年間に支払った医療費や保険により補填された金額の明細を記載したリストです。医療費通知や医療費の領収書をもとに申請者が作成します。書類は、税務署に直接もらいに行くか、国税庁のホームページからダウンロードできます。明細書には、領収書1枚ごとではなく、医療機関・支払先ごとに合算した金額を記入します。

確定申告書の書き方(寄附金控除・医療費控除)

用意した書類をもとに、確定申告書を記入していきます。確定申告書は、国税庁のホームページからダウンロードできるほか、税務署や各市区町村の窓口などで受け取ることができます。ちなみに、確定申告書Aと確定申告書Bの2種類がありますが、確定申告書Aは2023年(令和5年)1月から廃止されるため、確定申告書Bを入手しましょう。

確定申告書には、第一表と第二表の2枚があり、第一表で記入した金額の詳細を第二表に記入するイメージです。一見、複雑なように見えますが、一つ一つの項目を丁寧に埋めていけば、意外と簡単に書くことができます。

まずは、源泉徴収票を参考に、「収入金額等」「所得金額等」「所得から差し引かれる金額」の項目を記入してみましょう。

寄付金控除に必要な記入項目

寄付金控除を受ける場合には、第一表の「所得から差し引かれる金額」の項目にある「寄附金控除」の欄、第二表にある「寄附金控除に関する事項」の2箇所を記入します。各自治体から送付されている寄附金受領証明書をもとに、寄付先や寄付金の合計額を記入しましょう。

<第一表の記入箇所>

<第二表の記入箇所>

引用:国税庁「確定申告書等の様式・手引き等(令和3年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」(申告書B【令和3年分以降用】

医療費控除に必要な記入項目

医療費控除を受ける場合には、第一表の「所得から差し引かれる金額」の項目にある「医療費控除」の欄を記入します。医療費控除の明細書を参考に、1年間に支払った医療費の合計額を記入しましょう。また、確定申告書を提出する際には、医療費控除の明細書を添付することが必要です。

<第一表の記入箇所>

引用:国税庁「確定申告書等の様式・手引き等(令和3年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」(申告書B【令和3年分以降用】

<医療費控除の明細書のイメージ>

引用:国税庁「申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)

ふるさと納税の確定申告にはスマホでできるe-Taxが便利

確定申告書を記入したときに、内容が合っているか不安に思う人も多いはず。実は、記入した確定申告書を税務署に持ち込むと、記入ミスが無いか、添付書類に不備が無いかなどを細かくチェックしてもらえます。初めて確定申告を行う場合には、提出前に税務署に相談しておくと安心できますよ。

また、マイナンバーカードを持っている場合は、パソコンやスマートフォンから確定申告ができるe-Taxの活用が便利です。インターネット上で指示に従いながら項目や金額を入力していくことで、確定申告書を作成できます。特に、第一表と第二表で同じ金額を書く場合でも、1度の入力で各項目へ自動的に振り分けられるので作成効率がアップします。提出もインターネット上で行えるため、わざわざ税務署に赴く必要もなくなります。1年目で確定申告書の書き方を覚えたら、2年目以降はe-Taxを利用した確定申告を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

この記事では、ふるさと納税と医療費控除を併用して税負担を軽減する方法を紹介しました。併用する場合には、ワンストップ特例制度が使用できない点や、医療費控除によりふるさと納税の控除限度額が変わる点などに注意が必要です。特に、控除限度額が変わると、ふるさと納税の自己負担額が増えてしまうため、事前に必ず再計算しておきましょう。

また、ふるさと納税と医療費控除を併用する場合、確定申告書を行うことが必要です。一見複雑そうな確定申告ですが、落ち着いて一つ一つ記入していけば簡単に作成できます。毎年の税負担を少しでも軽減させるためにも、確定申告を利用してふるさと納税と医療費控除を併用してみてはいかがでしょうか。

ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の限度額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!