株式や不動産の売却で譲渡所得がある場合のふるさと納税の限度額はどうなる?

株式や不動産の売却で譲渡所得がある場合のふるさと納税の限度額はどうなる?

ふるさと納税を検討している方の中には、譲渡所得がある場合に限度額がどうなるか気になっている方もいることでしょう。

ふるさと納税には限度額が定められており、正しい知識を身につけてから利用することをおすすめします。

この記事では、譲渡所得がある場合のふるさと納税の限度額、譲渡所得や控除限度額の計算方法、手続きの流れを解説します。ふるさと納税と譲渡所得について詳しく知りたい方は、是非参考にしてください。

譲渡所得がある場合のふるさと納税の限度額はどうなる?

ふるさと納税は多く納めればその分恩恵を受けられるというものではありません。恩恵を受けられる限度額が決まっており、人によって設定が異なるため、自身の限度額がいくらなのか事前に把握しておくことが大切です。

譲渡所得がある場合には、ふるさと納税の限度額が引き上げられます。そもそも譲渡所得とは何なのか、ふるさと納税の仕組みなどを詳しく見ていきましょう。

そもそも譲渡所得とは?

国税庁によると、譲渡所得とは、土地や建物などの不動産、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することにより生じる所得とされています。

参照:国税庁|No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

ただし、事業用の商品といった棚卸資産や山林などの譲渡による所得は譲渡所得にはならないので注意してください。

ふるさと納税の仕組み

ふるさと納税とは、居住地に納付していた税金を好きな地域に納付できる制度です。

納税者はこれまで居住地の自治体に対し、勤務先や税務署などを通して税金を納めていました。しかし、ふるさと納税が導入されたことによって、自分の好きな自治体に納税できるようになりました。 

納税先を変更することにどのようなメリットがあるのでしょうか。例えば、生まれ故郷と現在の居住地が異なるケースでは、生まれ故郷を納税先に選択できる点は魅力でしょう。また、ふるさと納税では、寄付金額の約3割に相当する特産品を手に入れることが可能です。

ふるさと納税を行った年の所得税の還付、翌年度分の住民税の減額も受けられるため、納税額は同じでも、納税者が受けられる恩恵が大きくなることからふるさと納税を選ぶ方が増えています。

ふるさと納税の仕組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

譲渡所得(売却益)の計算方法

譲渡所得(売却益)を計算する場合は、何によって得られた譲渡所得なのかによって計算方法が異なります。株式と不動産の場合の譲渡所得の計算方法について詳しく解説していきます。

株式の場合

株式投資の利益は、基本的に譲渡所得として扱われます。そのため、株式投資で多くの利益を得ると、ふるさと納税の限度額が引き上げられるので、ふるさと納税によって受けられる恩恵が大きくなります。

株式投資の譲渡所得の計算式は以下の通りです。

総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料など)

例えば、100万円で取得した株式を150万円で売却、手数料が1万円かかったとすると、150万円-101万円で譲渡所得は49万円です。

ただし、NISA口座は非課税なので、ふるさと納税の限度額が増えません。一般口座、特定口座(源泉徴収なし)は確定申告をすることによって限度額を引き上げることができます。源泉徴収ありの特定口座は確定申告が不要ですが、確定申告を行わなければ限度額を増やすことができないので注意してください。

不動産売却の場合

不動産売却における利益も、基本的に譲渡所得として扱われます。そのため、不動産売却にて多くの利益を得るほど、ふるさと納税の限度額が引き上げられるので、ふるさと納税によって受けられる恩恵が大きくなります。

不動産売却の譲渡所得の計算式は以下の通りです。

売却価格-取得費(購入価格や購入時の仲介手数料、印紙代など)-譲渡費用(売却時の仲介手数料や印紙代など)

例えば、諸費用込2,000万円で購入した土地を2,500万円で売却、100万円の譲渡費用がかかったとすると、2,500万円-2,100万円で譲渡所得は400万円です。

ふるさと納税の控除限度額の計算方法

ふるさと納税の控除限度額の計算は複雑です。その理由は、所得だけでなく、家族構成、扶養家族の有無によっても控除限度額が変化するためです。

ふるさと納税の控除限度額を簡単に計算するには、シミュレーションを利用することをおすすめします。例えば、ふるらぼの「かんたんシミュレーター」では、3ステップで寄付の限度額を調べることが可能です。

例えば、給与収入「500万円」、家族構成「既婚」(配偶者控除あり)、扶養家族2人(0~15歳)では、寄付上限額が52,000円と表示されます。給与収入が同じで未婚の場合は、寄付上限額が61,000円です。

自身の控除限度額がいくらになるのか気になる方は、シミュレーションの利用をおすすめします。なお、限度額を確認する方法を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

譲渡所得の有無によるふるさと納税の控除限度額の違いをシミュレーション

課税所得の有無によってふるさと納税の控除限度額がどのくらい変化するかシミュレーションしてみましょう。なお、今回は年収以外の条件は以下で統一します。

【条件】
不動産の所有期間は8年(長期譲渡所得:住民税の税率5%)
不動産の譲渡所得は1,000万円(住民税所得割50万円)

ふるさと納税の控除上限額は以下の計算式を使用します。

住民税所得割額合計×0.2÷(0.9-所得税の税率×1.021)+2,000円

年収別にシミュレーションしてみましょう。

所得300万の場合

勤務先にて年末調整をしており、所得控除後の所得が300万円の方の控除上限額は以下の通りです。

所得税率:10%
総合課分の住民税所得割額:300万円×10%=30万円

【譲渡所得がない場合】
(30万円+0万円)×0.2÷(0.9-0.1×1.021)+2,000円=77,197円
控除限度額:77,197円

【譲渡所得がある場合】
(30万円+50万円)×0.2÷(0.9-0.1×1.021)+2,000円=202,526円
控除限度額:202,526円

両者を比較した場合、譲渡所得があるほうが125,329円控除上限額が増えました。

所得400万の場合

勤務先にて年末調整をしており、所得控除後の所得が300万円の方の控除上限額は以下の通りです。

所得税率:20%
総合課分の住民税所得割額:400万円×10%=40万円

【譲渡所得がない場合】
(40万円+0万円)×0.2÷(0.9-0.2×1.021)+2,000円=116,976円
控除限度額:116,976円

【譲渡所得がある場合】
(40万円+50万円)×0.2÷(0.9-0.2×1.021)+2,000円=260,695円
控除限度額:260,695円

両者を比較した場合、譲渡所得があるほうが143,719円控除上限額が増えました。

所得500万の場合

勤務先にて年末調整をしており、所得控除後の所得が500万円の方の控除上限額は以下の通りです。

所得税率:20%
総合課分の住民税所得割額:500万円×10%=50万円

【譲渡所得がない場合】
(50万円+0万円)×0.2÷(0.9-0.2×1.021)+2,000円=145,719円
控除限度額:145,719円

【譲渡所得がある場合】
(50万円+50万円)×0.2÷(0.9-0.2×1.021)+2,000円=289,439円
控除限度額:289,439円

両者を比較した場合、譲渡所得があるほうが143,719円控除上限額が増えました。

譲渡所得ありのほうがいずれのケースでも控除上限額が増えています。年収400万円と年収500万円を比較すると控除上限額の増加額は同じ結果(1円の誤差は小数点以下を四捨五入したため)となりましたが、これは所得税の税率が同じであるためです。年収300万円と年収400万円の比較から分かる通り、所得税の税率が高いほど、控除上限額が増えています。

そのため、譲渡所得があり、年収が多い方ほど、ふるさと納税を利用した場合に受けられる恩恵が大きくなるでしょう。

ふるさと納税の手続きの流れ

ふるさと納税の不備なくスムーズに利用するには、事前にどのような流れで手続きを進めるか把握しておくことが大切です。ふるさと納税の手続きの流れは以下の通りです。

  • 上限控除額を調べる

  • 寄付する自治体と返礼品を選択する

  • 自治体に寄付を申し込む

  • 返礼品と寄付金受領証明書を受け取る

  • 寄付金控除の申請を行う

自治体に寄付を申し込み、返礼品と寄付金受領証明書を受け取れば、ふるさと納税が完了というわけではありません。寄付金控除の申請を行うまでがふるさと納税に必要な手続きであるため、忘れず申請しましょう。

ふるさと納税のやり方について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

ふるさと納税に関するよくある質問

ふるさと納税と譲渡所得の理解を深めるには、よくある質問と回答を確認しておくことをおすすめします。

Q.不動産を売却した時、ふるさと納税は使える?

可能です。不動産の売却によって譲渡所得が発生した場合、ふるさと納税の上限額が増え、ふるさと納税で受けられる恩恵が大きくなるため、上手にふるさと納税を活用しましょう。

Q.専業主婦で譲渡所得が発生した場合、ふるさと納税は使える?

可能です。ふるさと納税で控除される所得税と住民税は納税者の所得に応じて課税されるため、非課税の専業主婦はふるさと納税による控除を受けることは基本的にできません。しかし、譲渡所得がある場合、ふるさと納税を行って寄付金控除を申請することでふるさと納税による恩恵を受けられます。

Q.不動産売却による3,000万円控除とふるさと納税は併用できる?

併用することは可能です。ただし、不動産を売却する際に3,000万円控除を利用して譲渡所得が0になった場合は、ふるさと納税を行うメリットがありません。譲渡所得が3,000万円を超える場合は、ふるさと納税が有効です。

まとめ

ふるさと納税を利用すれば、好きな自治体に納税できる、寄付金額の約3割に相当する特産品が手に入る、その年の所得税の還付や翌年度分の住民税の減額も受けられるといった恩恵を受けられます。

特に株式や不動産などの売却で譲渡所得がある場合は、ふるさと納税の控除上限額が増えるため、ふるさと納税による恩恵が大きくなります。

不備なくスムーズに手続きを進めるためにも、ふるさと納税に必要な流れも確認しておきましょう。