ふるさと納税の歴史|いつから始まったのか・なぜ流行ったのかわかりやすく解説

ふるさと納税の歴史|いつから始まったのか・なぜ流行ったのかわかりやすく解説

今や手軽な寄付金制度として知られる、ふるさと納税。地域の特産品など返礼品がもらえるほか、ワンストップ特例制度の導入で控除申請手続きが簡単になり、利用者がますます増えました。しかし、ここまでの制度を構築するまでには度重なる改正を経てきた歴史があります。

そこで今回は、ふるさと納税制度の沿革とともに、誰が作った制度でなぜ流行ったのか、魅力ある仕組みをご紹介したいと思います。改めて、ふるさと納税を利用するメリットを確認できる記事になっているため、ぜひ参考にしてみてください。

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ふるさと納税とは

ふるさと納税とは、都道府県や市区町村への寄付金制度の一つです。故郷や応援したい自治体を自由に選択することができ、原則として自己負担額2,000円を差し引いた全額が、所得税および住民税から控除されます。

例えば、所得税と住民税の納税額が10万円の場合をみてみましょう。ふるさと納税を利用しない場合は、通常、住民票のある自治体への納税が義務付けられます。一般的な納税ですので、寄附金控除といった追加の手続きはありませんが、返礼品をもらうこともありません。

しかし、ふるさと納税を行えば、10万円のうちの一部を他の自治体に「寄付金」というかたちで納付でき、かつ寄付をした自治体からは、お礼として地域の特産物などの返礼品がもらうことができます。さらに、寄付金額は自己負担額2,000円を除き、確定申告の際に手続きをすれば控除の対象となるのです。

また、平成27年に導入された「ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告の必要もなくさらに手軽にふるさと納税を利用することが可能になりました。「ワンストップ特例制度」は給与収入のある会社員を対象としており、確定申告の必要がないことや寄付先は5自治体までなど条件があります。しかし「ワンストップ特例申請書」を提出するだけで、その他の確定申告で必要な煩雑な手続きが省略できることが大きなメリットです。

ふるさと納税を利用してもしなくても、納税の義務は生じます。それならばふるさと納税を上手に活用し、返礼品がもらって楽しみましょう。

ふるさと納税の仕組みについて詳しく知りたい場合は、「ふるさと納税の仕組みとは?限度額の計算方法や住民税が安くなる理由を解説」の記事を確認してください。

ふるさと納税の歴史

ふるさと納税制度の設立に向けた最初の一歩は、2006年10月に「故郷寄付金控除」の導入が提案されたことでした。これは、当時の福井県知事であった西川一誠さんからの問題提起で、大都市集中の傾向が強い日本で、地方は将来を担う子どもに未来を託し、コストを費やしていても、その子どもたちが納税前に大都市圏へと流出してしまうことを懸念してのことでした。つまり、ふるさと納税は、都市と地方の行政収支のバランスの悪さを是正することを目的として、「故郷」に寄付することで、自治体は育てた子どもたちからのコスト回収を期待する制度だったといえます。

その後、2008年にふるさと納税が開始されますが、すぐに世の中に浸透したわけではありませんでした。ふるさと納税が注目され、利用者が急増したのは2011年の東日本大震災以降になります。今でこそ、返礼品を目的としてふるさと納税を利用する人が多いですが、この震災を機に、ボランティアでも募金でもない新しい震災支援としてふるさと納税が利用されたのです。これを機に故郷だけでなく、応援・支援したい自治体に寄付する傾向が強くなり、利用者が増えるきっかけとなりました。

これまで、確定申告における控除申請の手続きが、ふるさと納税を行う際のネックになっている人もいましたが、2015年「ワンストップ特例制度」の導入により、ふるさと納税を行うことへのハードルが低くなりました。ワンストップ特例制度は、条件はあるものの、税務署での申請手続きが省略できるため、より手軽に始められるようになったのです。

しかし、ふるさと納税の知名度が上がるにつれて問題となったのが、各自治体による返礼品競争です。寄付金獲得のために「還元率の高さ」や「換金目的」を重視する自治体が増えました。Amazonのギフトカードや著しく還元率の高い返礼品が出回ったため、総務省は2019年に返礼品の規制を強化します。主な変更点は以下の3点。

  • 返礼品は地場産の品物に限り、価格は寄付金額の3割程度にする

  • 返礼品の価格やその割合の表示を行わない

  • 商品券・電子マネーなど金銭に変わるものや資産性の高い品物(貴金属・宝飾品・電子機器)は返礼品にしない

この規制により、「ふるさと納税の返礼品=地域の特産品」というイメージが定着し、現在に至ります。自治体としても、ふるさと納税が特産品のPR活動となり、地域の活性化につながっているといえるのではないでしょうか。

西暦

出来事・改正

2006年

「故郷寄付金控除」導入の提案

2008年

ふるさと納税制度が開始

2011年

東日本大震災により寄付者が急増

2015年

「ワンストップ特例制度」の導入

2019年

返礼品の規制強化

ふるさと納税はどのような目的で作られたのか

ふるさと納税は国民にとっても自治体にとっても納税の意識を高めるためのものとして、以下3つの目的がありました。

  • 納税者が寄付先を選択する制度

  • 納税者が自治体に力になれる制度

  • 自治体が国民にアピールすることができる制度

第一に、ふるさと納税は、納税者が寄付先を選択することができる制度です。自ら選択するということは、自分が治めた寄付金が、その自治体でどのように使われるのかを考える機会になります。それはつまり、納税に対して関心や高い意識を持つことにもつながるといえるでしょう。

また、ふるさと納税は、自分の寄付によって自治体を支援することになります。就学・就職などで故郷を離れることになっても、生まれ故郷やお世話になった地域に恩返しすることができる制度です。また、応援したいと思う地域に、寄付金というかたちで貢献することも可能です。

ふるさと納税は、自治体が自分たち取り組みを国民にアピールすることのできる場としても機能しているといえます。それぞれの取り組みを開示することで自治体間の競争が生まれ、自治体側も選ばれるために地域の在り方を考える契機になることが期待できます。

ふるさと納税が流行った理由

それでは、ふるさと納税が流行した理由について考えてみましょう。ふるさと納税の利用者がここまで増えたのには、以下のような理由があります。

  • ふるさと納税は自己負担額2,000円でできるから

  • 魅力的な返礼品が多いから

  • 食料品や日用品など家計を助ける返礼品が多いから

ふるさと納税は自己負担額2,000円でできるから

ふるさと納税は、実質自己負担2,000円で税金控除が受けられる仕組みです。控除限度額は年収や家族構成によって異なりますが、上限の範囲内であれば全額が控除の対象です。自己負担2,000円のみで税金の控除が受けられるのは、魅力的なシステムだといえるでしょう。

魅力的な返礼品が多いから

現在、ふるさと納税に参加する自治体は、1,700以上にのぼります。ふるさと納税を行えるポータルサイトの数も増え、返礼品の選択肢も広がりました。

地域の特産品が並ぶ中、自分の控除限度額に合わせて返礼品を選ぶのは、ショッピングを楽しむ感覚に近いものがあります。心惹かれる返礼品が見つかることも、ふるさと納税を行う人が増えた一因といえるでしょう。

食料品や日用品など家計を助ける返礼品が多いから

ふるさと納税では、食料品や日用品を返礼品として用意している自治体が数多く見受けられます。こうした返礼品は、家計を助けるのに一役買ってくれること間違いなしです。どうせ買わないといけないものならば、ふるさと納税の返礼品でいただくのも賢い選択です。

ふるさと納税をするメリット

ふるさと納税を利用するメリットは、寄付というかたちで自治体を応援し、税金控除を受けながら返礼品をもらえることです。自己負担2,000円を除く控除対象となる寄付金額は、もともと納税する予定の金額です。

現在住んでいる自治体にただ税金を納めるだけではなく、応援したい自治体を選び、寄付金の使い道を自ら選択できることも、ふるさと納税の大きなメリットです。

ふるさと納税する際の注意点

手軽に利用できるふるさと納税ですが、いくつかの注意点があります。注意が必要なのは、主に以下の4点です。1つずつ確認してみましょう。

  • 控除限度額を超えると自己負担額が増える

  • 他の控除と併用する場合控除限度額が変わる

  • 確定申告とワンストップ特例制度で申請方法が異なる

  • ワンストップ特例制度には利用条件がある

控除限度額を超えると自己負担額が増える

控除限度額は、所得額や家族構成によって異なります。当然ですが、上限を超えてしまうと、超過分は自己負担となります。まずは、自分の控除限度額をきちんと把握するようにしましょう。シミュレーターを使えば、簡単に控除限度額の目安を算出することができます。

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その他の控除と併用する場合、控除限度額を丁寧に確認する必要がある

控除の限度額を把握していても、他の控除と併用する場合は、さらに注意が必要です。税額控除には住宅ローン控除などがあり、所得控除には医療費控除などがあります。他の控除がある場合、控除の枠がかち合うことがないよう、あらかじめ確認しておくと安心です。

確定申告/ワンストップ特例制度で寄附金控除の申請をする必要がある

現在、ふるさと納税の寄附金控除の申請には「確定申告」と「ワンストップ特例制度」の2通りの方法があります。それぞれ手続きが異なる上、両方を利用することはできません。

ワンストップ特例制度を利用できる人は、ワンストップ特例制度で申請を行い、それ以外の人は確定申告で申請しましょう。ワンストップ特例制度の利用条件は、次で解説します。

ワンストップ特例制度には利用条件がある

ワンストップ特例制度の利用にあたっては、前もって自分が条件を満たしているかの確認が必要です。ワンストップ特例制度の主な条件としては、以下2点があります。

  • 確定申告の必要がないこと

  • ふるさと納税の寄付先が5団体以内であること

主に給与所得者である会社員などがその対象になりますが、他の控除を利用する都合で確定申告を行う場合は、ワンストップ特例制度を利用できません。

ふるさと納税のやり方

それでは、実際にふるさと納税の手順を確認しておきましょう。寄付の申込をする前に、シミュレーションを使って控除限度額の目安を把握しておきましょう。ふるラボの「かんたんシミュレーター」なら、年収・家族構成・扶養家族のわずか3ステップで限度額の目安がわかります。

おおよその限度額が把握できたら、寄付の申込をしましょう。手順は以下の通りです。確定申告とワンストップ特例制度、それぞれの方法をご紹介します。

<確定申告の場合>

  • 寄付する自治体(返礼品)を選び、寄付金を納める(申込をする)

  • 寄付をした自治体から寄附金受領証明書が届く

  • 翌年の確定申告で必要書類とともに申請する

  • 寄付をした年の所得税、及び翌年の住民税から控除を受ける

<ワンストップ特例制度を利用する場合>

  • 自治体と返礼品を選び、寄付金を納める

  • 寄付先の自治体にワンストップ特例申請書を提出する

  • 翌年の住民税から控除を受ける

ふるさと納税の詳しいやり方については、下記を参照してください。

まとめ

現在、多くの人が利用するふるさと納税。その歴史を紐解くと、さまざまな試行錯誤がありました。ふるさと納税は、自分が納める税金を誰にどのように使ってもらうかを自分で選べる機会です。また、返礼品をもらいながら、税金の控除ができるという大きな魅力があります。いくつかの注意も必要ですが、賢く使って大いにメリットを享受しましょう。

ふるラボでは、一人ひとりに寄り添ったふるさと納税の利用をご提案しています。「もの」から「まち」から寄付先の探し方はさまざま。あなたにぴったりの寄付先を探してみませんか?

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